『今、京町家に住む』意味を再考
京町家とは戦前の京都市街地に建てられた木造住宅の総称。京町家は間口の狭い敷地に建てられていることが多く、敷地の奥へ連なる「前見世ー中ノ間ー奥ノ間ー中庭」という室構成になっている。 かつての京町家は、道路に面する「前見世」の空間で商売を行い、「中ノ間ー奥ノ間ー中庭」へと向かっててパブリックからプライベートな空間へと切り替わっ ていく特徴を持っていた。そのため、京町家には住宅でありながら家族だけではなく町の人々が入り込め
る空間が存在した。 また「中庭」まで繋がり「中ノ間ー奥ノ間」の横にある「通り庭」は、その上部が火袋と呼ばれる吹抜空間となっており、前面道路から中庭までの風の流れを コントロールする機能を持っていた。そのため京町家は、暑い京都の夏でも快適に過ごせるような温湿度環境を調整する機能を持った住宅でもあった。しかし『今、京町家に住む』ということを考えた時、当時の生活様式や気候、家族構成等住む人や周辺環境の諸条件は大きく異なっている。そこで『今、京町 家に住む』意味を再考するにあたり、先述した京町家の特徴を継承しつつ、今の生活に合わせた現代型の京町家を提案致します。まず、京町家の特徴である「前見世ー中ノ間ー奥ノ間ー中庭」という構成を継承。「前見世」とは外部と繋がる事ができる空間であるという特徴と、そこから「中ノ間ー奥ノ間ー中庭」がプライベートな空間へと切り替わっていく特徴のみを継承する。では、この住宅におけるパブリックな空間とはどのような空間であるのか。2020年のCOVID-19によるテレワークの普及などによって近年、職場以外でも仕事を行う一般的なサラリーマンが増えてきている。 そこで現代型の京町家では、「前見世」は前面道路に開きながら自宅の中で仕事ができる「書斎=家の中のサードプレイス=ミセ」として生まれ変わる。そし て、「中ノ間ー奥ノ間ー中庭」はダイニングキッチンーリビングー中庭として住宅のプライベート空間を展開し、「ナカノマーオクノマーナカニワ」として生まれ変わる。また、温湿度環境の調整機能を持った「通り庭」は玄関や階段室、廊下などの住空間へ変化させる。先述した通り庭の吹抜空間による風の流れのコントロールは、この100年で京都の平均気温が3〜5度も上昇してしまった ため調整機能を失ってしまった。そのため、現在の住宅では特殊な立地でない限りは人工的な調整機能=断熱や空調でし か住空間の温湿度環境を快適にすることができなくなってしまった。一方 で、京町家に断熱を施すと既存の風合いのあ る壁面を全て断熱壁で覆ってしまうこととなり、その風合いは失われてしまう。そこで、ダイニングキッチン、リビング のような主空間は生活を優先し断熱壁を採用し、常に人が滞在しない住空間は既存の京町家の風合いを優先し、東側の 既存壁面は表しのままとする 。さらにこの住空間は空気層断熱層としても機能するため、主空間の断熱性能は向上する。 このように従来の「前見世ー中ノ間ー奥ノ間ー中庭」と「通り庭」の関係性を継承しながら、現代型の京町家では意匠 と温湿度環境を両立させる。我々が今京町家にそのまま住もうとしても、かつての生活様式や情報技術、さらに地球環 境の諸条件が大きく異なっているため、当時と同じ生活を送ることは もちろんできない。『今、京町家に住む』ことは、 その諸条件を乗り越えながらいかに京町家を尊重し継承できるかというところに意義がある。今回の提案は その条件と 継承のバランスを熟考した新町屋プロジェクトです。
売主様から頂いた写真 |
これも頂いた写真ですが昭和を感じます(^^) |
現在の外観① |
ホコリなどの飛散防止のために足場を組みました。 |
柱と梁 外壁を残し解体しました |
スケルトン状態(骨組み)にし、ここからいよいよ設計に入ります。 |
今回は、いつもお世話になっている設計事務所さんと一緒にこのプロジェクトを進めています。町屋の風合いを残しながらこれからの「ここに住む」という観点で空間デザインだけでなく、断熱などの性能も含め進めてます。
少しだけ構造体お見せ致します(^^)我々も仕上がりが楽しみです!
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